神戸地方裁判所 平成2年(わ)929号 判決 1991年9月30日
国籍
韓国(慶尚南道固城郡永吾面蓮塘里四七四の一)
住居
兵庫県明石市魚住町清水二一六九番地
遊技場経営
富山喜一こと朱英五
一九四五年一〇月二六日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官大森礼子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、兵庫県明石市二見町西二見二〇八〇番地の一において「第一土山センター」等の名称で遊技場(パチンコ店)を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、
第一 昭和六二年分の総所得金額は四一九三万四〇一四円で、これに対する所得税額は一六三六万八七〇〇円であるにもかかわらず、自己の所得の一部を除外するなどの行為により、総所得金額のうち二二六七万四〇一四円を秘匿したうえ、同六三年三月五日、兵庫県加東郡社町社五一番地の三所在の所轄社税務署において、同税務署長に対し、同六二年分の総所得金額は一九二六万円で、これに対する所得税額が五五八万二五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一六三六万八七〇〇円との差額一〇七八万六二〇〇円を免れ、
第二 昭和六三年分の総所得金額は一億三一〇六万四一三四円で、これに対する所得税額は六五九六万一三〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、総所得金額のうち一億一四六一万四一三四円を秘匿したうえ、平成元年三月四日、前記社税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の総所得金額は一六四五万円で、これに対する所得税額が三八六万円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額六五九六万一三〇〇円との差額六二一〇万一三〇〇円を免れ、
第三 平成元年分の総所得金額は二億四二一〇万八一七〇円で、これに対する所得税額は一億一五九一万一六〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、総所得金額のうち二億二〇四〇万五一七〇円を秘匿したうえ、同二年二月一九日、全記社税務署において、同税務署長に対し、同元年分の総所得金額は二一七〇万三〇〇〇円で、これに対する所得税額が五九二万一二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億一五九一万一六〇〇円との差額一億九九九万四〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 第一回公判調書中の被告人の供述部分
一 大蔵事務官作成の査察官調査書二七通(検甲八ないし三一号、三三ないし三五号)
一 山本治郎、山岡修三、池田輝雄、中村良雄、朱英十(三通)、立花傳(三通)、池内誠、北村基、滝本佳長、斉藤裕二、佐藤公俊、鷲山厚生、西畑孝一、納多義郎、京本光夫、水月均、青木一郎、竹内あつ子、田辺正孝、芦田豊、廣瀬久徳、小林聰、徐義雄、増田砂智子及び朱英七の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 徐義雄の検察官に対する供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二五通
一 被告人の検察官に対する供述調書二通
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書(検甲二号)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲三号)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書(検甲四号)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲五号)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の証明書(検甲六号)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲七号)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(検甲三二号)
(法令の適用)
被告人の判示第一ないし第三の各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するので、各所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一ないし第三の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金三五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉田昭)